Electron 1.0 における API の変更点
Electron が始まって以来、以前の Atom-Shell と呼ばれていた頃から、Chromium のコンテンツモジュールとネイティブ GUI コンポーネント向けに、クロスプラットフォームの JavaScript API を提供する実験を行ってきました。 この API の始まりは非常に原始的で、時間をかけて初期設計を改善するためにいくつかの変更を加えてきました。
Electron は 1.0 リリースに向けて準備を進めていますが、この機会を利用して、最後の問題となっていた API の詳細を記述したいと考えています。 以下で述べる変更点は 0.35.x のものです。古い API の利用に対する非推奨の警告を発するので、将来の 1.0 リリースに備えてアップデートしてもよいでしょう。 Electron 1.0 は数ヶ月先になりますので、これらの変更が破壊的になるまでの猶予があります。
非推奨の警告
デフォルトでは、非推奨 API を使用している場合に警告が表示されます。 これを無効にするには、process.noDeprecation
を true
にします。 非推奨の API 利用のソースをトラッキングするには、警告を表示する代 わりに例外を投げるように process.throwDeprecation
を true
に設定したり、非推奨のトレースを表示するように process.traceDeprecation
を true
に設定したりすることができます。
組み込みモジュールの新しい利用方法
組み込みモジュールは、独立したモジュールに分離されるのではなく 1 つのモジュールにまとめられるようになったので、他のモジュールと競合することなく 使用できます。
var app = require('electron').app;
var BrowserWindow = require('electron').BrowserWindow;
従来の require('app')
の方法は後方互換性のためにまだサポートされますが、以下のようにして無効化もできます。
require('electron').hideInternalModules();
require('app'); // エラーを送出します。
remote
モジュールの利用がより簡単に
組み込みモジュールの使い方が変わったので、レンダラープロセスでメインプロセス側のモジュールを使いやすくしました。 以下のように、remote
の属性にアクセスするだけで利用できるようになります。
// 新しい方法です。
var app = require('electron').remote.app;
var BrowserWindow = require('electron').remote.BrowserWindow;
以下のような長い require チェーンはもう不要です。
// 古い方法です。
var app = require('electron').remote.require('app');
var BrowserWindow = require('electron').remote.require('BrowserWindow');
ipc
モジュールの分割
ipc
モジュールはメインプロセスとレンダラープロセスの両方に存在し、それぞれの側での API が異なっていたため、新規ユーザーは非常に混乱していました。 混乱を避けるため、メインプロセスの ipcMain
とレンダラープロセスの ipcRenderer
にモジュール名を変更しました。
// メインプロセス
var ipcMain = require('electron').ipcMain;
// レンダラープロセス
var ipcRenderer = require('electron').ipcRenderer;
また、ipcRenderer
モジュールでメッセージを受け取る際に event
オブジェクトが追加されました。これは ipcMain
モジュールでメッセージがどのように処理されるかを併せています。
ipcRenderer.on('message', function (event) {
console.log(event);
});
BrowserWindow
オプションの標準化
BrowserWindow
のオプションは、他 API のオプションとスタイルが異なっていたり、名前に -
が入っていたりしていたため、JavaScript では少し扱いづらかったようです。 これらは、従来の JavaScript の名前に標準化されました。
new BrowserWindow({ minWidth: 800, minHeight: 600 });
DOM の API 名の規約に準拠
Electron の API 名は、以前は URL
ではなく Url
のように、すべての API 名で camelCase を使用していましたが、DOM には独自の規約があり、ID
ではなく Id
を使いつつも、Url
ではなく URL
を使用しています。 DOM のスタイルに合わせて、以下の API の名称変更を行いました。
Url
をURL
に名称変更しました。Csp
をCSP
に名称変更しました。
これらの変更によって、アプリで Electron v0.35.0 を使用していると非推奨の通知が多く出てくると思われます。 これは簡単な方法で修正できます。 すべての Url
の記述を URL
に置換するだけです。
Tray
のイベント名の変更
Tray
のイベント名のスタイルが他のモジュールと少し異なっていたため、他のモジュールと一致するように名前を変更しました。
clicked
をclick
に名称変更しました。double-clicked
をdouble-click
に名称変更しました。right-clicked
をright-click
に名称変更しました。